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なんと菅谷は怪力であった。
遼子は何も出来なくてただ見ていただけだが、車から出ると、道端に投げ捨てた上着を拾って手で汚れを払うと菅谷へ渡した。
「ありがとう。」
その時の菅谷の表情に、遼子はハッとしたかと思えば、ドキドキと心臓がおかしな鼓動を繰り返した。
そして、顔が紅色に徐々に染まって行く。
老夫婦は何度も何度も御礼を言うと、ゆっくりと車を走らせた。
菅谷の素早い行動は、仕事をしている時とは何も変わらないが、ホットした菅谷の顔にいつもとは違うギャップを感じたのだろう。
口ばかりのインテリでナルシストだと思っていた菅谷に、全く異なる一面を見た遼子は、一瞬で好きになってしまったのである。
菅谷はそんな遼子の想いを微塵も感じとっていない。
菅谷にとって遼子は初対面の時の印象が強く、自分は嫌われていると自覚していたが、仕事が出来ないわけではない。
アイデアは豊富で、細かい事にも気付いてくれて、随分と助かった事もあった。
菅谷は何事もなかった様に車を走らせ関越道へ入った。
「坂本さん、休憩しょうか!」そう言うとパーキングへと入った。
「菅谷さん、珈琲飲みますか?」
「そうだね、あそこに自販機があるね、坂本さんはブレンドで良いかな?」
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