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「いいよなぁ学生って。なんでもできて自由じゃん」
「自由だけどさぁ、兄さんも大概でしょ、自由業みたいなもんじゃん」
「ただの自由じゃなくて、充足感がある自由だよ」
「ごめんちょっと意味わかんない」
「なんでだよ!」
隙あらばそういうおっさんくさいこと言うんだよね。俺にしてみれば、旦那の片腕として仕事をしている兄さんの方が充足感ありそうなもんだけど。
世界的企業の社長の妻って肩書き、兄さん自身は好きではないらしかった。そうだろうなと思う。そういう堅苦しくて型にハマったようなものは一番敬遠するってこと、長い付き合いでよくわかっていた。
外資の一流企業ともなると、日本のそういう会社とは全然違う堅苦しさがあるのかもしれない。
「すいません、シャンディガフください」
その隣でカノジョはしれっと酒を頼んでいるし。自由なもんだ。
「あ、そういやぁさ」
兄さんが軽く頭をかきながら、うーんと唸った。
「アレ知らねぇか、アレ」
「アレじゃわかんないよ」
「うーん、ほら、俳優?の」
「俳優?」
今までの話と何の関係もなくて、思わず変な声が出た。芸能関係に完全に疎い人からそんな言葉が出てくると思わなくて、変な声が出たっていうのもある。
「いや、わかんねぇ、なんか俳優? 歌手?」
この件、ついさっきもカノジョとやったような。
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