scapegoat

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俺はそのセリフの余韻を感じながら、何の気無しにまたその雑誌を開いた。風が吹いてくるくらいパラパラとめくって、カノジョが戻ってくるまでの暇つぶしに勤しむ。 「ふーん」 本当にふーんて感じ。シャツ1着3万円とかパンツ1本8万とか。買えねーって。こういう雑誌は、気に入ったコーディネートを見つけて、似たような服を安い値段で探すためのもんだわな。 その過程でふと目に止まったのは、真ん中あたりにあったカラーページ。特集記事のページだった。 ちょっとつり目のシュッとした男。暗めの背景を伴ってページ全体にアップで写っていたから、ちょっとギョッとした。 隣にこれまたでっかく白抜きで名前が書かれていた。 「あれ、えー……ああ」 あれ、たしかこいつ。最近テレビでもネット広告でもよく見るから、名前はすぐわかったけど、腑に落ちるまでちょっと時間が空いたのは、こいつの肩書きがよく分からなかったからだった。 なんか、歌手だったような気がする。でもモデルも俳優もやってるし、結局何の人かって言われたらわかんなくなっちゃって。 「何難しい顔してんの?」 裸のカノジョがベッドに戻ってくる。軽く首を傾げてるのが可愛い。 「いや、こいつさ、見たことあるけど何のやつだっけって思って」 「え?」 「ほら、こいつ」 カノジョにそのページを見せた。
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