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ずいっと目の前にそのページを出したもんだから、カノジョの焦点にあわなくて、はぎ取るみたいに雑誌ごと取られた。
「見えねぇよバカ」
「ごめんーって、わざとじゃないからさぁ」
「で、なんだって?」
適当な距離で改めてそのページを眺めた。
「な、その俳優? 歌手? なんだけど、本職なんだっけなーと思っただけ。よくテレビとかで見るけど、こういう雑誌にも出てんだな。モデルかな?」
言いながら違和感があったのは、別にこんな話題で話を広げるつもりがなかったからだった。まぁいいや、本当興味ないし。
「どっちでもいいし、どうでもいいんだけどさぁ」
そしてカノジョの手から雑誌を取ろうとした瞬間、カノジョは「こいつ」と何度か瞬きをしながら言った。
「なに?」
反応すると思ってなかったからびっくり。雑誌の背表紙の角に触れたまま、俺はカノジョの顔を見た。
カノジョは目を丸くしている。
「こいつ、俺の中学の同級生だよ」
「えっ?」
変な声が出た。
「同じクラスで、たまに家に遊びに行ったりしてたんだよ。歌手になりたいとか言ってたけど、俳優もモデルもなんでもやってるな」
「え、マジなの?」
「マジ。でも中学出てから会ってないけど」
完全に冷めた感じで見てたから、展開が意外すぎてびっくりする。
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