scapegoat

5/106
156人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
「なんか俳優だか歌手だかやってるって話は聞いてたんだけど、こんなに本格的にっていうか、ちゃんと芸能人としてやっていけてると思わなくてさ。最近よくテレビとか出てるし」 感慨深そうに言う。俺はもう滅多なことは言えないと思って、そっかーと相槌を打つだけだった。 「しかしかっこよくなったもんだなぁ」 それよりも、カノジョがしみじみとそう言ったことのほうが気になって仕方なかった。 「えっ? かっこいいかなぁ?」 ちょっと張り合って大袈裟に首を傾げてみるけど、カノジョは一向に気にしたようではない。 「中学の頃も顔立ち整ってて女子にはモテてたけど、あんまり派手な感じじゃないっていうか、わりと奥手な感じだったから、随分変わったっていうか華やかになったっていうかさ」 「それってかっこよくなったとは言わなくね?」 「そこは拘らなくてよくね?」 俺の周りには昔の知り合いが有名人になったみたいなことないからわかんないけど、昔から知っているやつがそうなると、いろいろ思うところがあるんだろうな。 でも他の男をかっこいいとか言われたら面白くねぇっての!
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!