scapegoat

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登校すると、教育学部と文学部の分かれ道あたりに、横長い看板と数人のささやかな人だかりが見えた。いつもカノジョとバイバイする場所の違和感がすごい。 「なんか貼ってある」 カノジョが指をさした。ちょっと遠くて見えないけど、カラフルな紙が何枚も貼ってある。なんかあれみたい、選挙のポスターみたいな……。あれ、選挙のポスター? 「もしかして、さぁ」 何の勘が働いたものか、ベストカップル賞が頭をよぎる。カノジョも真横で、無表情で俺の顔を見つめている。 「なんか嫌な予感がする」 カノジョが言うと本当にとんでもないことが起こっていそうだから怖い。 虫の知らせは当たる。人だかりの後ろの方から看板を眺める。「ベストカップル賞ノミネート」と書かれていた。プリの写真を引き伸ばしたみたいなキラキラしたカップルの写真を貼り付けたA4の紙が、枡状に切られた枠の中に並べて貼り付けられている。合格発表の番号を探すみたいに、横から満遍なく眺めた。 「うえー、やっぱり」 みんなアホ面、もといモデルのようなキメ顔と笑顔。しめて11枚。その中に俺らの写真だけがなかった。 「あ、ないじゃん」 板を軽く指差したまま言う。 「ってことはさ、俺らもしかしてエントリーされてないんじゃね?」
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