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カノジョは露骨に嬉しそうな顔をして俺の顔を見上げた。
「んー、かもね、ありえる」
結局話のネタだったとか? それはそうだったとしたら、散々脅かされて釈然としないところもあるけど。
すると人垣が割られて、野郎が一人、ポスターの前に現れた。筒状に丸められた紙を広げて、あっという間に空いた場所に貼り付けていく。俺らの顔だった。
「え、あ?」
しかも適当に取られたスナップ写真引き伸ばしたみたいな、なんとも言えない間抜けな写真!
「え、こんなのいつ撮ってた?」
カノジョは写真を見ながら、露骨に眉を顰める。さ
「ちょっ、ちょっと待って!」
そのままさっさとその場を離れる野郎の首根っこを捕まえた。俺らの顔を見て、奴は少し狼狽えた。写真の顔が目の前にいるとは思ってなかったんだろう。
「なんだよこの写真! 写真? ポスター?」
どっちでもいい。それよりポスター貼られたこととなんか適当な写真撮られてたことそのものが問題だ。
「俺らマジでエントリーしてんの? ちゃんと話聞いてないんだけど」
俺は怒るというより、ちょっと焦りながら言った。こんな形で目立ちたくないんだよ、カノジョと静かにカップルやれればそれでいいのにって気持ちが強くて。
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