156人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
男は俺らを見て目をまんまるくして、あ、ポスターのじゃん!と言った。
「なんだー、揃ってるならちゃんと写真撮らせてくれたらよかったのに! 間に合わせでこんなのになったよ」
俺の聞きたいことと彼の言っていることの温度差がすごい。
「いや、だからそもそもエントリーされてるのかどうかが知りたいんだって!」
食い下がると、欧米の役者みたいに露骨に肩をすくめて「エントリーしてなかったらここに写真貼らないよ」と言った。
そりゃそうだと思う一方、本当に心当たりがなくて一気に不信感に襲われた。
「副代表の推薦枠だし、貼らないわけがない」
のも束の間、あっという間に不信感の元凶が明かされた。
「え、副代表? って?」
なんとなく心当たりがあって、念を押すように聞いてみる。
「あのー、多分二人の同級生の」
聞いた名前は予想通り、俺らの同級生の男。
そのつもりはないのに、あんぐりと口を開けてしまった。
「マジかあの野郎……」
「マジで何にも聞いてない」
何の気なしにカノジョに目をやると、カノジョも同じように口をあんぐりさせている。
「あ、もうね、辞退はできないってよ。もうお金発生してるから」
野郎はペラペラよく喋る。
「金って何の?」
「このポスターと当日使うタペストリーと衣装と……」
しまいに指折り数えている。
最初のコメントを投稿しよう!