scapegoat

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カノジョは兄さんのお気に入りだった。変な意味じゃなく、友達としてお気に入りって感じ。 「なんか、今まで俺の周りにいないタイプだったんだよな。落ち着いてていいよなあいつ」 いつだったか、酔っ払った兄さんがそんなこと言ってたけど、それは彼の育ちがいいからっていうのもあると思う。カノジョは代々続く書道家の御曹司で、その道では有名な書家でもある。 でもカノジョ自身は、そういう威厳に満ち溢れたという感じではなくて、おっとりしてて穏やかですんごい優しい。書家としてのキリッとした顔も好きだけど、俺にしてみたらそれはおまけみたいなもの。書家ではない、カノジョ自身の穏やかな魅力に、すっかり惚れ込んでいたのだった。 「あんま迷惑かけんなよ」 兄さんにはそう釘を刺されたけど、自分でもそう思っている。同い年なのに、俺なんか本当ガキで、ついつい甘えすぎちゃうから。 俺はビール、カノジョはとりあえずってコーラを頼んだ。兄さん3杯目のビールと合わせて、改めて乾杯した。 「っあー!!」 誰ともなく、炭酸をグッと飲み干して一言。おっさんくさいったらない。 「やっぱビールだな!」 「コーラもいいし」 つまみは店特製フィッシュアンドチップスで。兄さんは早くも軽く酔っていた。
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