scapegoat

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いつも賑やかな学内だけど、今日は装飾のせいか余計に派手に見える。我ながら全く他人事で、タイムスケジュールを知ろうともしていなかったせいか、装飾の合間にステージの予定表が貼り付けてあるのを見つけ、ようやく流れを知ったのだった。 「あ、なんかステージのあたり行かないとヤバいんじゃね? カップル賞11時からだって。もう10時半だ」 ヤバいと言いながら、カノジョの喋り方はのほほんとしている。腹を括った感があったとはいえ、カノジョもカノジョでこのイベントにあまり乗り気ではないのかもしれない。 ステージに行ってみると、実行委員だという見たこともない女の子が、まるでこっちが予定を知らなかったのが悪いみたいに露骨に顔を顰めて「一番遅いです」と言った。俺の印象はこの時点でだいぶ悪かったけど、カノジョは「だろうな」と笑いながら呟いただけだった。 ステージ裏のベニヤで囲った狭い空間に案内される。楽屋なんだそうだけど、出場者だというカップルがすでに跋扈していて、ただでさえ狭い空間が満員電車の中みたいに感じる。 「ぜってえ設計ミスじゃんこれ」 どのカップルも自分たちの世界に入っていて他のカップルのことなんか特に気にしていないみたいだった。ああ、選挙ポスターみたいなのに写真載ってたやつばっかりだ、なんて当たり前のことを思う。
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