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「表彰をトークショーでやるっていうか、そのままトークショーに傾れ込むらしいよ」
「結構やっつけだね」
「でもさぁ、なんかローカルだけどテレビ局とか来るって聞いたから、ある程度手が込んでるんじゃないかなぁ」
「えっ、テレビくるの?」
表の賑わいも聞こえるけど、ステージ裏の話も賑わう。
「お待たせしました! いよいよベストカップルコンテストが始まります!」
一際大きな声の快活なアナウンスが響いて、ようやくみんな口をつぐんだ。
「すいません、エントリーナンバー順に並んでもらえますかっ? 番号順に呼ぶんで、そっちから出てください」
和やかな空気は一変した。湧いたみたいに控え室に現れたスタッフは、早口で言った。
指差した「そっち」というのは俺とカノジョがいる一番すみっことは反対側の、カーテンで仕切られた壁の方だった。
エントリーナンバー順って言われても、満員電車状態のここで動けっていうのは無理がある。幸いステージ上手にエントリーナンバー一番がいたからよかったものの、そのカップルがステージから抜けたところで空間は狭い。カノジョを抱き寄せながら、みんなでジリジリと動く。
「マジミスだよこの設計。バカかっつうの」
文句を垂れる俺を横目に、カノジョは俺の首筋におでこをピッタリ寄せて、顔を隠すようにしていた。
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