scapegoat

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もちろんカノジョに向けられたものだった。真隣の俺と一切視線が合わない。当のカノジョはチラッと向こうを見て、すぐに軽く下に視線を落とした。 会場端っこの奥の方に、バズーカみたいなすごいカメラを持ったおっさんがいた。明らかに大学生じゃない、明らかに中高年なおっさんが何人かいる。辟易とした。奴とカノジョの姿を、そのバズーカが追っているのがよく見えたからだ。 完全にこの数日のワイドショーの影響だ。相手が誰なのか、ある程度特定される形で世間に知れてしまっている。俺、全然面白くないんだけど。 「それでは、ベストカップルコンテストのスタートです!」 司会進行らしい女の子が声を張り上げた。会場からは大きな拍手。わあっと襲ってくる波みたいな歓声を浴びて、ちょっと緊張する。 「なぁ、緊張する」 顔は動かさずにカノジョにだけ伝わるようにぼそっと言ったけど、歓声やスピーカーからの割れたBGMがうるさくて全然聞こえてない。 (それにしても唯一同性でカップルで出てるのが俺らで、しかも一番最後に出されるなんて、なんかオチ担当って感じだよなぁ) 緊張の間、そんなことを思ってもいた。もちろん考えすぎだろうけど、これだけ異性カップルが揃っていたらそう思いたくもなる。この大学で同性カップルは俺らだけじゃないだろうに。
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