scapegoat

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俺の思いとは関係なく、コンテストは爆音のBGMと女の子の進行のもと続く。挨拶と概要が説明されると、エントリーナンバー一番から順にどれだけ仲がいいかのアピールタイムが始まった。 「なおですね、事前にベストカップルの投票期間を設けてすでに投票されたものもあるんですけど、今回急遽会場投票も行うことになりました!」 思えばどう投票するのか、聞いた気もするけどすっかり忘れていた。まぁ別に俺らなんか噛ませ犬みたいなもんだろうし、正直どうでもいい。 場の雰囲気はコンテストが始まった時と変わりなく、終始最高潮みたいな歓声が溢れている。各カップルの身内による応援と思しい歓声がほとんどみたいだった。なんか出来レースみたい。緊張も落ち着くと、場の空気感に失笑した。 「エントリーナンバー四番、年上彼女さんと年下彼氏さん、付き合って半年のカップルです! どうぞ!」 俺らはなんて紹介されるんだろう。実行委員会側には、どうする?みたいな話もされなかった。 カノジョは、仲良し具合をアピールするカップルをしらーっと眺めていた。後ろに立っていた俺は、カノジョのわずかな首の動きで、これは飽きているなというのを確信していた。 「あー帰りたい」 ぼそっと口にするとこれは聞こえたみたいで、軽く振り返って笑われた。
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