第1話 花の女子高生、前世は魔王です。

1/7
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/65ページ

第1話 花の女子高生、前世は魔王です。

「ふざけるな!」  それは、いつも怒号から始まります。 「こんなの、勝ち逃げじゃないか! させるものか!」  どこか痛みを帯びて震える、男性の声。薄らと目を開くと、間近にその持ち主の顔がありました。  ツンと跳ねたオレンジ色の短髪。眼光鋭いコバルトブルーの瞳がこちらを見下ろしています。けれど、その表情は判然とはしません。私の視界が、やや霞みがかっている所為です。  視界同様に、私の意識もぼんやりと宙を漂うように散漫で。加えて、ひどく寒いのです。  ただ一点、背中の辺りだけがじんわりと温かくて、私はその温もりを縋るように追うのですが、それもやがて薄れてきてしまいます。  全ての感覚が紗幕に覆われたみたいに遠のく中、最後にあの人の声だけが響きました。 「お前がどこに逃げても、絶対に見つけ出す! 決着が付くまで、俺は絶対に諦めない! 何度でも何度でも、俺はお前の前に現れる……待っていろ!」  そこで、世界が暗転しました。  次に目を開いた時、私は自室のベッドの上でした。星空柄の遮光カーテンの隙間からは、細く日の光が差し込んでいます。窓の外からは雀の鳴き声もしました。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!