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第1話 花の女子高生、前世は魔王です。
「ふざけるな!」
それは、いつも怒号から始まります。
「こんなの、勝ち逃げじゃないか! させるものか!」
どこか痛みを帯びて震える、男性の声。薄らと目を開くと、間近にその持ち主の顔がありました。
ツンと跳ねたオレンジ色の短髪。眼光鋭いコバルトブルーの瞳がこちらを見下ろしています。けれど、その表情は判然とはしません。私の視界が、やや霞みがかっている所為です。
視界同様に、私の意識もぼんやりと宙を漂うように散漫で。加えて、ひどく寒いのです。
ただ一点、背中の辺りだけがじんわりと温かくて、私はその温もりを縋るように追うのですが、それもやがて薄れてきてしまいます。
全ての感覚が紗幕に覆われたみたいに遠のく中、最後にあの人の声だけが響きました。
「お前がどこに逃げても、絶対に見つけ出す! 決着が付くまで、俺は絶対に諦めない! 何度でも何度でも、俺はお前の前に現れる……待っていろ!」
そこで、世界が暗転しました。
次に目を開いた時、私は自室のベッドの上でした。星空柄の遮光カーテンの隙間からは、細く日の光が差し込んでいます。窓の外からは雀の鳴き声もしました。
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