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それでも、両親は納得してくれたようです。安堵の笑みを浮かべてから、改めて私の朝食に取り掛かってくれました。耳を切り落とした食パンに具を乗せてホットプレートでサンドしながら、母が上機嫌に訊ねてきます。
「どう? 真桜ちゃん。高校は楽しい?」
「……はい。問題ありません」
ほんの数秒答えに詰まってしまいましたが、幸い二人はその間について特に疑問には思わなかったようです。
「そう、それは良かった。真桜ちゃん、こんなに可愛いんだもの。すぐにクラスの人気者になっちゃうわよね」
「そうだ、真桜はこんなに可愛いんだ。変な男に言い寄られてやしないか? 困った奴が居たら、すぐに父さんに言いなさい。父さんが追い払ってやろう」
熱の入った父の申し出に「大丈夫です。何事もありません」と返しつつ、私はとりあえず内心でホッとしていました。
彼らに話せないのは、実は夢のことだけではないのです。
◆◇◆
登校後、下駄箱を覗き込んだ私は、早速その異変に気が付きました。
――上履きがありません。
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