泡になんてなれない

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泡になんてなれない

カノープスはまさにライオンのように上に覆いかぶさって来た。逆光で笑顔が黒く見える。 「お前が決めるんじゃない、終わるタイミングは俺が決める。喋れもしない奴に何が出来る」 この最後の一言が、デルフィヌスのカンに障った。自分でも分かるほど、腹の奥がぎゅっとなって、苛立った。 デルフィヌスは投げ出していた拳銃を取り、カノープスの口に押し込んだ。 言葉を喋れない人間が下であると、そう思うこと自体が絶対に許し難かった。デルフィヌスの怒りは静かに訪れる。こうすればカノープスも喋れない。先のカノープスの理屈なら、立場は同じになったはずだ。 流石にちょっと動揺して目を泳がせるカノープスの首を押さえて、体をベッドに仰向けに叩きつける。デルフィヌスも女性とは言え職業柄鍛えている。一戦を終えた男なんて何時だって眠いのだから、猫みたいなものだ。 さぁ、此処からは立場逆転ではないか。 デルフィヌスは、黒いリップが乱れて青黒く染まった自分の唇を、ゆっくりと舐めるのだった。
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