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目を開けたら、ナサニエルのジャケットが体の上にかけられていた。
はっと気づいて起き上がると、すでに日が暮れかけている。
「ずいぶん寝ました。ごめんなさい、あなたが起きたことにも気づかなくて」
「良いんですよ。シルヴィアナも慣れない生活で疲れていたのでしょう。ゆっくり出来たのなら良かった」
膝を立てて、後ろに両手をついて遠くを見ていたナサニエルは、静かにそう答えてから、シルヴィアナに目を向けた。
碧玉の瞳に淡い感情をのせて、やや躊躇いながらも、きっぱりと言う。
「今晩、部屋に行っても良いでしょうか。あなたが嫌なことは何もしませんが、その。今日は昼寝をしてしまったので、夜に少しでも話せたら良いなと」
(この人にしては珍しく、建前を口にしている。本音は別にある)
瞳の奥に、抑えきれない炎が灯っている。その存在に気付きながら、いつまでも避けては通れないのだと、シルヴィアナは自分自身を鼓舞し、かつ納得させた。
柔らかな風におくれ毛を靡かせて、ナサニエルの目を見つめ返して、頷く。
「お待ちしております」
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