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 一方的に別れを告げられた。昨日まで、何ら変わらなかったのに……  健二がわたしのアパートに来た。上がるように言ったのに、部屋に上がらない。そして、わたしの部屋の合鍵をすっと差し出して「終わりにしよう、薫」と言った。突然の事で頭の中が真っ白になった。「オレ、何でも深刻に心配事にとらえる、お前の重ったるい性格がダメだ……」健二は無理やり合鍵をわたしの手に握らせると出て行ってしまった。わたしは呆然としてしまい、その日はただベッドの上に座っていたのを覚えている。  翌日、健二に電話をした。出てくれなかった。メールを送ったら返事が来た。「さようなら、池田薫さん」それだけだった。 「重ったるい性格」…… 健二はそう言っていた。わたしなりに努力した結果が、これだった。ここでまた深刻になったり心配したりしたら、ますます「重ったるい性格」と思われてしまうだろう。  付き合って三年。無駄な時間だった。そうは思いたくは無かったけど、結果はその現実を突き付けてきた。  気分を変えたかった。旅行でもしよう、そう思った。傷心旅行なんてちょっと古臭い感じがするけど、秋はそんな気分にさせるものがある。そして、やり直せそうな気持ちにもなる。重ったるくない自分になれそうだ。  わたしは駅の旅行案内センターに行った。そこには色々と紅葉が綺麗なパンフレットが並んでいた。その中の一部を手に取った。直感的にそこに決めた。すぐに受付で手続きをした。出発はシルバーウィークの始まる土曜日だ。
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