貧しい小説家

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

貧しい小説家

今、あなたは何処にいますか? 出来れば、この話は家で読んでいただきたい。 あるところに貧しい小説家がいたんだ。40歳の独身男性で、白髪交じりなボサボサの長髪、目の下にくっきりとクマが出来ている。頬は()けていて、ギョロっとした目つきの上、愛想が無く無口だったから、近所の人とも(ほとん)ど交流は無かった。定職にも()かず、小説を書いて無料投稿サイトにアップしていた。 生活費はどうしていたかと言うと、金が無くなっては空き巣に入って小銭を盗み、何とか過ごしていたんだ。 だがある日、大失敗をする。留守だと思った家で金目の物を探していると、中年の女性が居たんだよ。こっちを見なければ何もせず逃げたのに、足音に気付いたのか、彼女は後ろを振り向いてしまったんだ。彼は窓ガラスを割る用に持っていた金槌で殴り殺してしまったって話さ。 この話が面白いと思ったらスターを送ってくれよな。本棚にも追加してくれよ。ランキング上位に入れば、編集者の目に止まるかも知れないだろ? えっ?! 犯人はお前だろって? フィクションだよ、作り話さ。何? 殺人者を応援出来ないだって? そんなに責めるなよ。まあ、どうでも良いさ。俺の目的は、あんたをこの文章に集中させる事だったからな。おっと……何か違和感を覚えても絶対に後ろを振り向くなよ。 俺も殺人は繰り返したく無いからさ……。 了
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!