インベーダー家族

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 雀の鳴き声で目を覚ました僕は、布団から飛び起きると、すぐにリビングへと向かって、「おはよう」とお父さんに挨拶をした。  お父さんは食卓の前で新聞紙を広げて椅子に腰かけている。もう朝ごはんは食べ終えた後みたいだ。 「ああ、おはよう。つとむは朝寝坊しないな」 「だって、早起きしないとお母さんに怒られちゃうし」 「あ、ああ……そうか。けど、最近はお母さんだって、少し朝寝坊したぐらいで怒ったりしない。そうだろう?」 「まあね……」  僕は冷蔵庫に一目散に向かって、牛乳を飲もうとした。ところが、 「ツトムクン。牛乳ナラ、オ母サンガイレテアゲマショウカ?」  片言の気味の悪い話し方のは、いつもの顔で僕に微笑んできた。無理やり作った不気味な笑顔を僕に向けてくる。 「いらないよ。自分で出来るから」 「ソウイウワズニ、ホラ……」  ソイツは、冷蔵庫の扉を開けようとした僕の手ににゅるりと、自らの手を触手のように滑り込ませてこようとする。 「やめろよっ! いらないってっ言ってるだろっ! 僕に触るな!」 「ウッ、ツ、ツトム、クン……」  僕は思いきりそいつの手を払ってから、冷蔵庫の扉を開けて、牛乳を取り出した。 「つとむっ! お母さんに向かってその態度はなんだっ!」 「本当の“お母さん”ならねっ!」 「お前はなんてことを── !」 「こいつはお母さんじゃないよ! 侵略者(インベーダー)だっ!」  僕はお父さんに捨て台詞を吐いてから、コップに注いだ牛乳を飲み干した。そして、食卓にもつかずに、着替える為に部屋へと戻ることにした。 「ツトムクン……朝ゴハンハ……」 「そんなのいらないよっ!」  僕はそいつの顔も見ずに、リビングから飛び出して、部屋へと一目散に戻ると、すぐに布団にくるまった。 「お母さん……。お、かあ……さんっ……。会いたいよ……」  僕は布団の中で思いきり泣いた。本当のお母さんに会いたくて堪らなかった。  でも、あの青白い顔をした侵略者──インベーダーが、僕の“お母さん”へと変身してしまった。すり替えられてしまったんだ。  それなのに、あの宇宙人が僕の家族を侵略して、お母さんの振りを続けているのに、僕ら家族を壊そうとしているのに、お父さんはそれが当然のことのように、平然としている。  お父さんだけじゃない……。周囲の大人たちも……みんな、みんな、あの宇宙人に騙されているのに、気がついていない。 「お母さんを返せっ……。侵略者(インベーダー)めっ──!」  お母さんはきっとあの宇宙人に拐われて、今も何処かに監禁されているんだ。  僕はお母さんを取り戻すことを心の底で誓った。
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