インベーダー家族

8/15
前へ
/15ページ
次へ
「お母さん!」 「つとむっ! どうして……」  僕はお母さんを追いかけて、小学校の脇にある緑のフェンスで囲まれた駐車場までやって来た。  自動車の扉に手をかけようとしていた僕のお母さんは、僕に気がつくと、口許を掌で押さえて涙を流し始めた。僕も泣きそうになったけど、ぐっと涙が流れるのを堪えて、茫然と立ち尽くすお母さんの側まで近寄っていく。 「お母さん! やっと僕たち家族のところに戻ってきて……」 「──オ母サン? ソノヒト、ダレナノ?」 「え?」僕が思わず声をあげて、車の方を見ると──車の中には小さな宇宙人がいた。 「つとむ……これは……その……」  オ母さン? どウイうこトナノ? ナにヲイッテルンダロウ? ダって、コノヒトはボくノオお母さンなノニ? 「ごめんね……許してっ。ごめんなさい! つとむ……。全部……全部、お母さんがいけないのっ! お母さんが悪いのよっ! 許して……お願いだから、許してっ! つとむ……ううっ……」  どウして謝るの? オ母サん? ドウして宇宙人と一緒ニイるの? 「ごめん、なさいっ。つとむのことを一目でいいから見たかったのっ──! 私にそんな資格ないってわかってるのにっ! 許されないってわかっててもっ……耐えられなかったのよっ………」  ──僕はその日、理解した。  お母さんはもう僕ら家族のところに戻ってくることはないんだ。 「サヨウナラ……。ツトム……」  お母さんは別の星の──宇宙人になってしまったんだ。 「オ母サン、ドウシタノ? オメメにバイ菌入っチャッタノ?」  新しいカゾクと共に──。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加