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「お母さん!」
「つとむっ! どうして……」
僕はお母さんを追いかけて、小学校の脇にある緑のフェンスで囲まれた駐車場までやって来た。
自動車の扉に手をかけようとしていた僕のお母さんは、僕に気がつくと、口許を掌で押さえて涙を流し始めた。僕も泣きそうになったけど、ぐっと涙が流れるのを堪えて、茫然と立ち尽くすお母さんの側まで近寄っていく。
「お母さん! やっと僕たち家族のところに戻ってきて……」
「──オ母サン? ソノヒト、ダレナノ?」
「え?」僕が思わず声をあげて、車の方を見ると──車の中には小さな宇宙人がいた。
「つとむ……これは……その……」
オ母さン? どウイうこトナノ? ナにヲイッテルンダロウ? ダって、コノヒトはボくノオお母さンなノニ?
「ごめんね……許してっ。ごめんなさい! つとむ……。全部……全部、お母さんがいけないのっ! お母さんが悪いのよっ! 許して……お願いだから、許してっ! つとむ……ううっ……」
どウして謝るの? オ母サん? ドウして宇宙人と一緒ニイるの?
「ごめん、なさいっ。つとむのことを一目でいいから見たかったのっ──! 私にそんな資格ないってわかってるのにっ! 許されないってわかっててもっ……耐えられなかったのよっ………」
──僕はその日、理解した。
お母さんはもう僕ら家族のところに戻ってくることはないんだ。
「サヨウナラ……。ツトム……」
お母さんは別の星の──宇宙人になってしまったんだ。
「オ母サン、ドウシタノ? オメメにバイ菌入っチャッタノ?」
新しいカゾクと共に──。
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