インベーダー家族

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 一体どれくらいの時間が経ったんだろう。  僕は静まりかえった夜の公園にいた。スペースシャトルの形をした滑り台の上でひとりきりで、夜空に浮かぶ星の数を数えていた。  あの後、お母さんが車に乗り込んで立ち去ってから、気づいた時には僕はこの滑り台の上にいた。  まるで体がこの場所にないみたいな不思議な感覚が全身を支配していて、広い宇宙の暗闇の中をひとりで漂流しているみたいだ。この世界に僕はたったひとりきりなんだ、と夜の静寂と孤独な星の輝きが僕に囁いているようだった。  足が地面に着いているのに、底のない暗闇にどこまでも落ちていくような不思議な感覚。ポッカリとドーナツみたいに穴の開いた胸はブラックホールのように、僕の心を蝕んでいく。 「お母さん……」  星が流れた。夜空に浮かぶ星たちは、チカチカと点滅している。ぷかぷかと夜空に波が押し寄せてくる。夜空がじんわりと歪み始めた。  僕は一体どこに帰ればいいんだろう。  尋ねてみても、お月様は何も答えてはくれなかった。 「ツトムクン! ヤットミツケタ!」  誰かの声がした。滑り台の階段を登って、僕の宇宙船に侵入してきたのは── 「帰リマショウ……ワタシタチノイエニ……」  またしても侵略者(インベーダー)だった。僕の顔を見て、ほっと息をついた侵略者(インベーダー)は、僕の掌を握りしめてきた。 「嫌だ……。僕に帰る家なんかあるもんかっ!」
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