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リリィというのは本当の名前では無い。
正式名称はR-R-1型・陸上歩兵AI。
私は機械は好きだが、兵器は嫌悪している。
R-Rシリーズは軍事用ロボットで、だからその名称で呼ぶのは嫌だった。
「R-R―1。……Rri、ちょっと綴りは強引だがリリィはどうだろう?」
「リリィ、確か花の名前だとデータベースにありますDr」
「うん。そう。どうだろう?」
その時、リリィの体は工具台の上に居た。
首は私と一緒にパソコンデスクの傍らに。
だらりと垂れ下がった無数の赤と青と紫のコード、冷却液の流れるチューブがリリィの首と胴とを繋いでいた。
「Drのご希望に従います。今の所有者は貴方です……ですが、その名前で呼んで頂くのを僕はとても気に入ります、恐らく」
首だけのリリィは人口筋肉を動かしてにこりと笑った。
その瞬間、私もこのAIをとても気に入るだろうなと思った。
軍事用AI。命令を遂行するのみのロボット。
それが所有者に意見を述べる。
壊れた歩兵ロボット。頭脳部分に一部損傷があるとして、リリィは廃棄処分寸前で私の元に来た。
意見を言う、人間臭い、ロボットとしては致命的な、壊れかけの電子頭脳。
その笑みは、組み込まれた筋肉を動かすというマニュアルに基づいた機械的なモノではあったが、非常に魅力的だった。
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