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◆◇◆
この行為を望んだのは自分なのに、痛くて怖くて。もう止めてと言いそうになる。
「ひっ……」
これ以上ないくらい、体の中が彩人彩人でいっぱいになる。
「はいった……」
彩人が掠れた声で言った。
痛いけれど、嬉しかった。
嬉しかったけれど……寂しくて、悲しかった。
「ハナ。ハナ。好きだよ……ずっと一緒だ」
波奈は心の中で「私も」と応え、「ごめんね」と謝る。
この行為が終われば、波奈は彼の元を去る。
最後に想い出を欲しがった波奈を、彼は呆れるだろうか。
騙されたと恨むだろうか。怒るだろうか。
仕方がないと諦めてくれるだろうか。
ズルいのはわかっている。
けれど、どうしても……。
これから一人で生きていくために。
彩人への恋を終わりにするために、最後に一度だけ、波奈は彼の『お姫様』になりたかったのだ――。
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