かたちのないあした

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 脱力――して、私は弟の部屋に忍び込むことはもうやめた。弟も明日の出来事が予告された謎の紙切れの話題は一切してこなかった。  もう一度あの紙切れを見てみたいという気持ちはずっとある。  でもね。みんなそれぞれ違う出来事を体験するのだけれど、明日自分の身に何が起こるのかなんて誰にもわからない。生き方の形や姿に違いはあるけれど、成績なんかの優劣関係なく、みんな平等に生きているのだよ。  明日の出来事なんて、前夜にいちいち予言や予告されては面白味がない。  だから、明日の出来事なんてわからなくてもいい。明日を自分で作る楽しさがあると思えば、生きることにも余裕を持てた。 「姉ちゃん。最近、雰囲気良くなったな」 「きれいな姉ちゃん持てて、あんた幸せだよ。ふふふ、ふ」  笑って一日が始まって終わるくらいがちょうどいい。 <終わり>
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