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忍び込んだ弟の部屋の中を私は見回した。
部屋の片隅には本やゲームソフトが積み上げられ、テレビやPCにつながるコンセントの類が床を走る。
他、部屋のどこを見ても物が乱雑に片付けられていた。
床には何も書かれていない紙切れも散らばっていた。
私は家族以外の男子の部屋なんかに入ったことがなかった。だから、誰かの部屋と比較はできなかったけど、ここは――おこちゃまの部屋だ。
それにふさわしい言い方で感想。
ばっちい。
そんな部屋を探索する前に、私は弟が帰ってこないか緊張感を走らせた。
ここは赤の他人の部屋じゃない。家族の部屋だ。犯罪性は低い。というか、そんなの実質ないだろう。
それでも見つかったらややこしいことになる。
素早く目的を達しなければ。
弟が余裕を見せて生きている秘密がこの部屋にあるのだ。
どこだ――!?
本棚に並ぶ難しいタイトルの本の裏側にいやらしいタイトルの本が隠されていた。
ふむ。これじゃないな。
どこにある――!?
机の引き出しの奥には弟の同級生の女子の写真(切り抜き)があった。
ふうむ。弟の好みの女子がわかったような気がした。
でも、これじゃないな。
いや、弟の趣味とか好みが次々いろいろ知れておもしろいけど。
弟の好みとか趣味を暴くつもりはなかった。今は、だけど。
変わったものは見つからないなあと私が天井を仰いだ、そのとき――一枚のメモ用紙らしき紙切れが私の頭の上に落ちてきた。
私は落ちてきた紙切れをうまくキャッチ。そこには、こう書かれていた。
抜き打ち前夜
はて? なんのことだろう?
前夜――前の晩のことだ。
抜き打ち――何を知らせないで急に何かを行うことだ。
このふたつが組み合わさって――抜き打ち前夜。
明日、何かの抜き打ちが行われるのだろうか?
誰に? 弟に?
天井から落ちてきたこの紙切れは、弟が天井に貼り付けていたのだろうか?
わからない。
「ただいまー」
階下で弟の声がした。
帰ってきた。
私はその紙切れを握りしめ、慌てて弟の部屋から立ち去った。
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