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夜は花音にとって恐怖になる。
だから夕方になると、必ず俺は花音を家まで送る。
色のない世界に慣れはしたものの、これがいつまで続くのか、治るのか、漠然とした不安がいつもあって、そんな時花音は不安を全身で表す。
そんな日は一晩中花音に付き添う。抱きしめて、なぐさめて、甘やかす。
きっと大丈夫だと根拠なく断定し、安心させる。
頼られるのは居心地がいい。
いっそずっとこのままで、俺に依存し続ければいいのに…。
そんな醜い心を隠して俺は言う。
「大丈夫、ずっと側にいるよ」
俺がどれだけ花音を支えられているかわからない。でも花音が俺だけに見せる表情や動作から見て、きっとうまくやれているんだろう。
今日もレポートが終わった後、不安そうな花音を泊めることにした。
薄暗くなっていく中、たまにつまづきそうになる花音。
だから俺は彼女を引き寄せ、手を繋ぐ。
どうか不安にならないで。そんな気持ちが伝わったのか、花音が俺に抱きついてきた。
「諒君、ありがとう」
その仕草が可愛くて、守りたくて。
俺は思わず花音にキスをした。触れるだけのキス。
足りない。
もっとしたい。
そんな気持ちを隠していると知ったら、君はどんな顔をするだろうか。
どうかこの幸せな時間が1秒でも長く続きますように。
そんな俺の気持ちを感じ取ったかのように、
「ずっと一緒にいてね」
花音は俺の手を握りしめた。
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