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花音の彼氏になれて浮かれていた俺を現実に引き戻す言葉。
ずっとなりたかった花音の彼氏の座を手に入れた俺。それなのにどうして不安がまとわりつくんだろう。
花音が啓を忘れられないから?
それともあいつの存在?
いや…きっとこれは俺の問題だ。
俺が花音を信じきれてないんだ。
澄み切った空に暗雲が立ち込めるように、心が冷えていく。
『じゃあ早く自分のものにするんだな。逃げられないうちに』
頭の中でこだまする言葉。
いやだ。
やめてくれ。
思わず目を閉じる。
「諒君?」
そんな俺に温もりをくれたのは、やっぱり君だった。
急に手が温かくなり、柔らかい声が聞こえた。
目を開けると花音が心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫?具合悪い?」
「いや、大丈夫だよ」
花音に触れられて声をかけられただけで、落ちた俺の気持ちが浮上する。
思わず苦笑してしまうくらい、単純だ。
「花音、ありがとう」
おでこをくっつけて全身で花音を感じる。
恥ずかしそうにしながらも、それを受け入れてくれる花音。
彼氏だって番犬だって、何だっていい。
ずっと側にいて、俺が花音を守るんだ。
色のない世界で生きる花音。
この弱くて愛しい人を一生守りたいと、俺は改めて思った。
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