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空は白とも赤ともつかない色を纏いながら、鈍い光を放っている。
それはどこか非現実的な美しさで、私と彼女はそれを見ながら、しばらくぼんやりとしていた。
太陽が昇る。じきに霧も晴れるだろう。
「今年の抱負は?」
「後輩に仕事は振らない」
「言えてる」
笑った。年明けに社長にプレゼンするデータを消してくれた彼は、今頃ハワイでカウントダウンパーティの準備を終えてぐっすりと眠っているのだろうか。
でも、この東京の景色も悪くない。もうどうしようもなく最悪で、こなくそ、どうにでもなれーってできごとがあったとしても、そのあとにはそれを覆すほどのすばらしい景色ってのが待っているもんだ。
……まぁ、今回の代償がこの景色に見合ってるかは、わからないけど。
このツケは高くつくわよー、と呟く友に、うんうんと頷きながら、私は一気にビールを飲み干した。
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