四.定点へ

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暗雲が立ち込める、 災害本部を立ち上げた消防署の一室。 片岡消防隊長の言葉が 重苦しい雰囲気に更に拍車をかける。 「今から全員徹底する……、いや一時避難だ。」 撤退という言葉は負けを認める。 それを嫌った隊長の思いが痛いほど、神崎には分かった。 ついに鬼門岳の北側にも溶岩が見え始め、 日に日に成長し形を変えながら頻発する火砕流。 崩落を繰り返し、覆い来る噴煙に昼間も闇となる 不気味さはたとえようもなかった。 あれから三日三晩、火砕流は勢いをまし、山々の村落を飲み込み、町付近まで近づいていた。 今後の二次災害を防ぐためにも消防隊は決断を余儀なくされた。 「隊長、避難は全員無事終わったのですか?」 神崎は尋ねる。 大きな声で、イエスという言葉を期待していた神崎達の気持ちは、 次の言葉を聞いてもろくに崩れ去った。 「いや、まだ山のなかに取り残された人達がいる。マスコミ関係の記者だ……。」
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