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ごめんね
上空を閃光が走り、雷鳴が轟いている。
午後11時。
豪雨の中、駅へ向かう大通りへ出た和は、タクシーに叶衣を乗せている。
「和、ちょ、どうしたの?」
「悪いけどまた連絡するからお父さんにもよろしく伝えて」
「ちょ……まっ……」
畳んだ傘をタクシーの中へ押し付ける。そして彼女の言葉を終わりまで聞かずに、「ごめん」と言い残し走り出す。
振り返ることはなかった。
大切なものを大事にするには、失うことも恐れちゃいけないのだとしたら。
二者択一、決めるのは一瞬だ。それでいい。
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