25人が本棚に入れています
本棚に追加
告白します
先にベッドに入っていた蒼生が、和のためにスペースを空ける。はだけたパジャマの胸元からは、フルーツの甘い香りがふわっと漂う。
「のどかぁ……。ずっと知りたかったんだけどぉ、ねぇ、なんで俺に優しくしてくれるの?」
「ああ、それは、俺に似てるから」
「そうなの?」
蒼生は顔を上げて和の顔をまじまじと見つめる。
「俺は中学に上がるとき祖父母の家に預けられて、それからずっと、家族とは疎遠だよ」
「智やおじさんはとは普通に仲良くしてるじゃん?」
「それは今の店をじいちゃんが開くっていい出して、俺が店を引き受けたから。それがなかったら、智は取り敢えずとして、今でも没交渉気味だったね」
和の手が蒼生の頬を包み込み、両の親指が唇に何度も触れた。
「だから、なんか智の店行った時、よそよそしかったの?」
「そういうこと。女の人いたでしょ、あれ母親」
「えーっ」
蒼生は起き上がってタオルケットを握りしめている。怖い夢でも見たかのようだ。和はその後も母親のことは紹介していなかった。
「似てない」
「うるせえ」
和は思わず吹き出す。蒼生もつられて笑う。握りしめたタオルケットを伸ばして、和の身体にもかけようとする。
「いい歳してお互い関わりあいたくなくて疎遠にしてんの」
「なんか、なんか、意外。和にそんなことあるんだ」
「智は俺が家を出されてからもしょっちゅうじいちゃんちへ遊びにきたし、涼(すずむ)も着いてきたから、兄弟仲は良いんだよ」
「すずむ?」
「そう、うちの末っ子」
和がスマホに手を伸ばし、写真を見せる。祖父母、兄弟3人、夕里と龍弥もいる。
「兄弟がいるのってどんな感じなんだろ。俺のにーちゃん死んじゃったから。会ったことないし」
「いまは俺の、更に末っ子みたいなもんだろ」
「えー、家族枠なの?」
「不満なのか」
「だって……」
「そうそう、はっきり言っておく。叶衣とはより戻したりしてないし、完全にお前の誤解。あいつは仕事できてた」
和のツルツルした素材のパジャマをちまちまいじりながら、蒼生はまだ口を尖らせている。
「父親の会社で、うちの豆を扱いたいんだって。そんだけ」
「……そうじゃなくて。そこまでわかっててなんで……ずるいよ」
「ずるいって言葉は、俺の心を抉るな」
「だって、ずるいじゃん。なんで、俺のことそこまでわかってて」
和は身体を起こして、蒼生に向き合う。
「俺さ、昔、彼女いるのに思わせぶりなことして、女の子ひとり死なせました」
最初のコメントを投稿しよう!