前夜屋

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『最高です。ですが、大富豪になる、と分かっている前夜の気分にはかなわないでしょうね』 『ははは! うまいですね! 宣伝ですか』 『いえいえ、真理ですよ。どんなすばらしい出来事も、前夜の気分にまさるものはないのです。 結婚前夜の缶詰のおかげで、誘拐・殺害前夜から生還できた僕が言うのですから、確かです!』 『ええ? それはどういうことなんですか?』インタビュアーがわざとらしく驚いてみせる。  彼は前夜缶を手に持って、アピールしながら話し始めた。 『殺害される直前、絶体絶命の気分だった私に、犯人は結婚前夜の缶詰を吸わせたんです。 幸福な気分のまま、殺してやる、と、そういう約束だったからです。 そしてその時、犯人も何かの前夜の缶詰を開けて、私と乾杯したのですが、その缶詰の気分を吸ったとたん、犯人はぐったりとして倒れてしまったんです。 ああ、もちろん、一時的なもので、警察に逮捕後、すぐに元通りになったそうです。前夜缶は危険なものではありませんから』と、さりげなく安全性のアピールをすることも忘れない。
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