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『犯人とは逆に、私は幸せな気持ちと今後の生活への展望がパアッと開けたような、そんな素晴らしい気分になりましてね。犯人が意識を失ったことも幸いでした。
自力で監禁されていた地下室を脱出し、警察に駆け込んだのです。犯人は逮捕され、有罪判決がくだされました。
そして犯人からの慰謝料として、その場に残されていた缶詰や前夜缶製造機をもらって、今に至る訳です』
『おお~! なるほど。前夜缶が命を救ったんですね!』
『前夜缶はあらゆる気分を体験することが出来ます。私の誘拐殺害前夜缶も販売許可がつい先ほどおりました。
安全な場所に居ながらにして、最高の恐怖・ほんのわずかにまじる希望のスパイス! 唯一無二の気分を味わってみませんか?』
なんだか聞いたことのある宣伝文句だ。僕はやれやれ、と肩をすくめて、スクランブル交差点を渡り始めた。
インタビューはまだ続いている。
『誘拐犯には共犯者がいたとか?』
「ん?」
僕はギクッとして、おそるおそるモニターを見上げた。
『そうなんです。共犯者は私が殺される予定の朝、消えてしまったんです。私を見捨てて』
「えっ! な、何を言ってるんだよ……」
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