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気の毒な男の手が、胡坐をかいた太ももの上にパタッと落ち、おにぎりが床に転がった。男の目から涙がこぼれた。
「泣くな。泣くと、風船を膨らませられないだろう?」
男は突然、涙に濡れた瞳でボスをにらみつけた。そして立ち上がったかと思うと、猛然と風船に向かって突進し、手近な風船をバンッと割った。
「あっ、もったいない! お前、なにやってるんだよ!」とボスは叫んで、男をあっという間に捕まえて、手足を結束バンドで縛った。
「『前夜の気分缶詰』を作るのに、いくつ風船が必要だと思ってるんだ」とブツブツ言っている。
「いくつ必要なんですか?」
「一時間で膨らませた風船で、せいぜい三つか四つ、缶詰が出来るくらいだ」
チンッと電子レンジのような音がして、沢山の風船の間から、コロンとジュースの缶詰のようなものが転がり出て来た。
「お、一個目が出来たな!」とボスは嬉々として缶詰を拾い上げた。
ボスが缶詰を拾い上げたはずみに、部屋の一角を埋め尽くしていた風船がふわふわと動き、その下に隠れていた機械が顔を出した。冷蔵庫を横に倒したくらいの大きさだ。
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