運命を塗り替える

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― ―――― ―――――――――  それからしばらく、少女は何事もなかったように学院生活を送った。別に少女はニーナと特別関りがあるわけでもないし、彼女が『転生者』だろうが、ここが『乙女ゲーム』の世界だろうと、特段少女にとって問題があるわけでもない。いつも通りの生活を送るだけだ。  少女は授業が終わるとすぐさまに席を立ち、図書館へと足を向ける。ふと校舎の窓から空の様子を見ると、茜色に染まっていた。早く向かわなければ閉まってしまう。そう焦り、少し小走りになる。  今日は少しでも長く勉強がしたい。そう気が急いるのは、ニーナたちの話を聞いてからだ。ニーナたちの話には、転生の話とは別にもう一つの話があった。  それは『乙女ゲーム』の物語だ。  少女が聞いた話はこうだ。  公爵令嬢であり主人公であるニーナは、ある国で魔法学院に通うことになる。そしてニーナはそこである五人の男性たちに出会う。  この国の第一王子、その王子の護衛の騎士、生徒会長、担任の先生、そして軟派な同級生。この五人の顔良し、家柄良し、能力良し、の三拍子がそろったエリートに囲まれ学院生活を送る。つまりその五人は『攻略対象』というやつだ。  しかしそんな中ニーナはなかなか魔法が開花しなかった。誰もが学院に入り学ぶと、魔法が使えるようになるのに対し、魔力が学院一番に多いと言われているニーナには一切の魔法が使えなかった。そんな魔法に悩む日々を送るニーナに自身が選んだ攻略対象が慰め、恋をしていく。そうして過ごす中、ニーナの魔法は見事開花され、お互い惹かれ合っていき、見事二人は結ばれる。こんな話だ。  別にこの話自体には何も違和感がない。夢見る少女が考えそうな、ありきたりなお話だと思う。  しかし少女が一番許せなかったのは、ニーナの魔法がいつか開花されると約束されているこの物語自体だ。
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