運命を塗り替える

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 少女は物音を立てないようにこっそりとその場を後にし、先ほどの二人の会話を頭の中で整理していた。そのせいで、いつもより歩く速度が落ちているのがわかる。 (だからニーナ様は他の貴族と違ったんだわ)  元々、あのニーナには違和感を持っていたのだ。  この学院に通う生徒は全員貴族だ。しかしもちろん魔法に差が出る。魔法は貴族たちの中では一般教養となっているし、風潮的にも魔法が強く極めることこそ真の貴族だと言われているぐらいだ。もちろん魔法がうまく使えない子にはいじめや嫌がらせも起こる。  それを見過ごせなかったのがニーナだ。  ニーナはいじめられている人を庇い、いじめていた子らに糾弾したりもしていた。その彼女の行動が、実力主義が当たり前だった生徒たちに衝撃を与え、改心していったのだ。  おかげで最近では、いじめ等はなくなり、ニーナは魔法が使えない劣等生から使える優秀な生徒にまで慕われる存在となった。これが彼女が聖女と言われる所以だ。  一連の流れを少女も近くで見ていた。確かに彼女の行動は正しい。いじめは誰かを傷つける行いだし、正しい事だとは言わない。けれど貴族として、ましてや実力主義の魔法学院にいれば、魔法ができない劣等性に対していじめが起きるのは、ある意味必然であったともいえる。少女も快くは思わなかったが、仕方のない事だと思っていたのだ。  けれどニーナだけは違った。少女と同じく貴族として生きてきたのであれば、少女と同じ結論にたどり着いてもおかしくはないはずなのに。だからこそ少女はニーナに違和感を持ったのだ。今思えばそれはニーナが転生者だったからかもしれない。転生者だったからこそ、他の貴族たちと違った価値観を持っていたのだ。 (驚くどころか、むしろ納得してる自分にびっくりね……)  なんて想像力豊かなのだろうと呆れながら、少女は別の勉強場所を求めて歩く速度を速めた。
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