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第二章
岡原と電話してからの二週間は授業とテストに忙しく、あっという間に過ぎていった。
都賀駅の改札口で会う約束をした火曜日、待ち合わせの時間は七時だった。
六月に入り、曇りがちの日が増えてきた。今日も雨は降っていないが、曇っていて空が少し暗い。
七海は授業が終わって大学のある西千葉からまずは千葉駅に向かった。
岡原からは、千葉駅から都賀駅へは各駅停車なら銚子行きや成田行き、成東行きなどで二駅と伝えられていた。7、8、9、10番線から発車する各駅停車なら、必ず都賀駅に行くと言っていた。
そんなことを思い出していると、電車は二、三分で千葉駅に到着した。1番線で下車して連絡通路を歩いていると、電光掲示で成東行きを見つける。
七海はこの電車だ!と思いホームに降りて乗車する。しかし、この電車は5番線に入線していて外房・東金線回りの成東行きだった。都賀には行かない電車である。
電車は発車し、七海は二つ目の駅で降りた。蘇我という駅だった。七海は岡原と都賀で会う約束だったが、うろ覚えで蘇我は都賀と駅名の響きが似ているため、待ち合わせは蘇我だと勘違いしてしまった。
蘇我の改札口で七海は岡原を待った。七時を十五分過ぎても岡原は現れず、連絡も来ないため、七海は岡原に電話してみた。呼出音は鳴るが電話に応答はない。LINEにも連絡するが既読にならない。さらに三十分待ったが連絡はなく、七海は気を悪くして西千葉の自宅に戻った。
七海が自宅に帰ってから少しして、岡原から電話がかかってきた。
「待ち合わせの都賀駅には行ったけれど、七海さんに会えなかった。スマホを家に忘れてしまって連絡が取れなかった。すまない」
七海はこたえた。
「私も都賀で待ってたんですけれど」
「え、いなかったよ。JR都賀駅の改札口だよね」
七海は待ち合わせについて、よく思い出してみた。すると、とんでもないことに気が付いた。
「そういえば、都賀ではなくて、蘇我でした。こちらこそ、ごめんなさい」
「どうして蘇我にいたの」
と、岡原はたずねた。
「成東行きに乗って二つ目の駅で降りたら蘇我でした」
「そうか、外房線のホームから成東行きに乗ったんだね。千葉駅から出る成東行きは二種類あって、外房線のホームの5、6番線から発車する成東行きは都賀には行かないんだ。僕がスマホを忘れなければ連絡を取れたんだけどね。本当にすまない」
「こちらこそ、都賀に行けなくてごめんなさい。それにしても、千葉の電車は難しいですね。今後は外房線からの成東行きには気を付けます」
と、七海は言った。
「今回はお互い失敗があったから仕方がないよ。次回の約束をしようよ」
と、岡原は提案する。
「わかったわ。岡原さんは火曜日が都合がいいんですよね。三週間後の夜なら、予定が空いてます」
「じゃあ、今度こそ七時に都賀駅でお願いします」
「今度は、スマホを忘れないでくださいね」
七海は釘を刺す。
「了解」
岡原は快諾する。
そんなわけで、おいしいカレー屋さんはお預けとなったが、次回はすれ違わずに行けるのだろうか。
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