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「ま、正確には一回成り行きで告っちゃってるから、修学旅行までに返事がなければ改めてって感じになるけどな」
「好きな子が、いたんだ。……誰?」
そう聞いてみるも、まさか教えてはこないだろうと思っていた。
だが、その予想はあっさり裏切られる。
「オレと同じクラスの小野山在花ちゃん。遠坂も知り合いだろ?」
杉野は照れくさそうな笑みを浮かべて言った。
ドクンと心臓が跳ねる。
……今、確かに小野山さんの名前を言ったよな?
「席が近くなったり委員会一緒にやったりで仲良くなってさ。割と脈アリじゃねえかなって思ってるんだけど」
「そう、なのか……」
「遠坂もずいぶん在花ちゃんには気を許してるみたいだけど、それは何か理由が?」
杉野がジッと俺の目を見る。
その目でようやく気が付いた。
俺が小野山さんに気があるのではないかと疑っているのだ。その上で牽制するべく、こんな話をしだした。
「俺は……」
否定するべきか?
そもそも俺は、小野山さんに気持ちを伝えて困らせるつもりはない。
どういうわけか、俺は昔から女子に好意を寄せられることが多く、好きじゃない人に気持ちを告げられることの精神的負荷はよく知っている。
だけど……
「俺は、悪いけど杉野のことは応援できない」
「……それはつまり?」
「俺も小野山さんのことが好きだから。気を許しているように見えるなら、きっとそれは彼女が俺にとって特別な存在だから……だと思う」
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