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いや、いるけど。
でも私、遠坂くんのお姉さんことレナさんのことはよく知ってるし……。
兄弟が他にいないという話も聞いているから、レナさんでなければあの女性が遠坂くんの姉であるということはあり得ないのだ。
そして残念ながら、いつもぼさぼさの髪で大きなメガネをかけているレナさんとは全くの別人……。
そう思っていたけど、私はハッと気が付いた
……いや、待てよ?
レナさんといえば黒い髪に遠坂くん似の目元。そして何より二人の間の慣れた雰囲気。
私はもはや由梨のように立ち読みするふりすらせず、じっと女性を見る。
いつも私と会うときと、驚くほど印象は違うんだけど……間違いない。
──レナさん、だな。あの女性。
すっかり忘れていたけど、レナさんは姉弟というだけあって遠坂くんとはかなりよく似た美人。
そしてごくたまにではあるけど、ちょうど大学からアパートへ帰ってきたレナさんの姿を見かけることがある。
大学モードのときに近くですれ違ったことはなくて、ただ遠くで見ただけではあるけど、そういえばその時も今みたいに流行りを無難に取り入れた感じの服を着ていたっけ。
確かファッションのことはよくわからないからマネキンの服をそのまま買っていると話していた。
そして今、目の前の彼女が着ている服に見覚えがある気がしたけど、あれはさっき由梨といた店のマネキンが着ていたものだ。
そう思うと先ほどまで気にしていなかったところにもどんどん目がいく。
彼女が今楽しそうに手に取っているのは、今日発売されたばかりのサトウレナの新刊だ。
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