そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

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そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

○●○ 「在花、本当にありがとうね。キッチン貸してもらうどころか材料の買い出しにまで付き合ってもらっちゃって」 「ううん。私もどうせ夕ご飯の材料買いたかったし」 翌日。 私と由梨は、授業終わりに近所のスーパーに寄った後、私の部屋のキッチンに立っていた。 由梨お得意のカップケーキは、ホットケーキミックスを使ったお手軽なものらしい。 板チョコをチョコチップにするべく包丁で刻んでいるところこそ危なっかしかったけど、他は自分で言うだけあって手際よく作業を進めていた。 「よし、後は焼いたら完成。在花は何作ってるの?」 「ナスの煮びたし作ろうと思って」 「へえ、何か思ってたより渋いわね。もっとハンバーグとかグラタンとか、いかにも“女子力”って感じのメニュー想像してた」 「えへへ。ついつい野菜中心のメニュー考えちゃうんだよね」 「実家の影響?」 「だと思う」 切ったナスを多めの油で焼いて、生姜を加えためんつゆで煮る。 これが美味しいんだよねえ。とろっとしたナスがめんつゆによく合うんだ。 あれこれ夕飯のメニューを作っているうちに、由梨のカップケーキが焼ける甘い匂いもしてきた。 「ちょっと焦げちゃったけど上出来。良かったら在花も食べて」 満足げにうなずく由梨が、少し歪な形のものを私にくれた。 出来立ての焼き菓子って本当格別だ。 表面はサクサクして中はふんわり。刻んだ板チョコもとろりとしていて甘味が口いっぱいに広がる。
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