そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

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「すっごく美味しい」 「本当?」 私の言葉に由梨はぱあっと顔を輝かせる。 「在花にそう言ってもらえたら安心ね。……それにしても、遠坂くんが隣の部屋にいるのよね……食べてもらえるかな。緊張してきた」 由梨は大きく深呼吸をして、大事そうにカップケーキを手に取る。 「在花も付いてきてくれる?」 「もちろん。私と一緒にお菓子を作ってて、たくさん出来たからおすそ分けしに来たってことにしよ」 「わかったそうする」 神妙な面持ちでうなずいた由梨だったけど、私が「じゃあ行こう」と言うと、まだ心の準備ができていないと慌てだした。 埒が明かないので、私は半ば引っ張るような感じで由梨を連れて部屋を出て、レナさんの部屋のインターホンを押す。 すぐにドアが開いて遠坂くんが出てきた。 隣で由梨がひゅっと息を飲むのが聞こえる。 「小野山さん。と……」 遠坂くんは私の隣に立つ由梨を見て首をかしげる。 由梨が一歩前へ出て緊張気味の声で言った。 「あ、あの!わたし、在花の友達で藤田由梨です!こ、これ在花と食べようと思って作って余っちゃって……えっとだから、良かったら遠坂くんに食べて欲しいですっ!」 あの由梨がすごくテンパってる。 タッパーに入ったカップケーキを差し出しながら頭を下げている。 遠坂くんは、そんな由梨の様子を冷たい目で睨んで…… ……いや、違うな。今ならわかる。 たぶん、話したことのない女子からいきなりお菓子を差し出されて、どう対応したら良いのかわからないんだ。
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