そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

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「えっと……俺がもらって良いってこと?」 遠坂くんはしばらく悩んでいたみたいだったけど、ようやくそう言って私に確認する。 私が静かにうなずくと、遠坂くんは由梨が持つタッパーからカップケーキを一つ取り出す。 「じゃあ……いただきます」 「あ、あの、在花は美味しいって言ってくれたけど、本当に大した物じゃないし遠坂くんのお口に合わなければ全然食べてくれなくて大丈夫なので!」 カップケーキを口に運ぶ遠坂くんを見て、由梨はまた騒ぎ出す。 遠坂くんは一口かじってゆっくり咀嚼し、小さくうなずいた。 「美味しい、です」 「ほほ本当?よ、良かった~。まだあるのでお姉さんにも良かったら!」 「うん。ありがとう」 「はあ……良かった……在花、戻ろう」 「もう良いの?あ、じゃあ遠坂くんまた後で」 来た時とは逆に、今度は由梨が私の手を引っ張って私の部屋まで戻る。 そして中に入ると、へなへなと座り込んだ。 「在花ぁ、本当に遠坂くんがいたよぉ」 「うん」 「わたしが作ったカップケーキ、美味しいって言ってくれたわよね?幻聴じゃないわよね?」 「うん」 「どうしよう、わたし、嬉しすぎてどうにかなりそう」 両手で紅潮した頬を押さえる由梨。 ああ……恋してる女の子ってこんなに可愛いんだな。 ぼんやりとそんなことを思った。 「ねえ在花、わたしもっとお菓子の作り方たくさん覚えてくるわ!……そうしたら今日みたいに……遠坂くんに渡すの協力してくれる?」
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