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何故かすぐに答えられなかった。
「在花?」
由梨が不安げに見上げてきたところで、私は慌てて「うん、もちろん。協力する」と言って、無理やり笑ってみせた。
○●○
「……ナスってこんなに美味しいんだ」
由梨が幸せそうな表情のまま帰った後、私はいつも通り隣の部屋で夕食を食べていた。
今日のメニューの中で遠坂くんのお気に入りは、先ほど由梨の隣で作っていたナスの煮びたしらしい。
「ナスって変わった食感だし、あんまり味しないからそんなに好きじゃなかったけど、これは美味しい」
「本当?ナスって油吸うと食感変わるんだよね。あと、めんつゆ使うとだいたい美味しくなるの」
この野菜は好きじゃなかったけどこの料理は好き……そう言ってもらえるのは、実はかなり嬉しかったりする。
昔、ピーマンが嫌いだと言っていた親戚の子が、私が作ったピーマンのおかか炒めを食べてくれた時もすごく嬉しかったな。
「ねえありりん。あたしはこっちの甘~い香りがする物も気になるんだけど~」
レナさんがそう言って指さすのは、由梨が作ったカップケーキの入ったタッパー。
メガネにぼさぼさ髪のオフモードのレナさんは、やっぱり昨日見た女優並の美女とはすぐには結び付かない。
「それは私の友達が作ったんです」
「あ、もしかして昨日ショッピングセンターでありりんと一緒にいた美人さん?」
「あ、はい。そうです」
「へへへ。美人女子高生が作ったお菓子とは貴重ですなあ。じゃあ一口味見を……」
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