そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

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カップケーキにすーっと手を伸ばすレナさん。 その手を遠坂くんが軽く叩いた。 「姉さん、デザートは後」 「ちぇっ、けち。でもひろはもう食べたんでしょ?」 「俺は持ってきてもらってすぐに食べたから良いんだ。甘いモノ先に食べて夕飯食べなかったら栄養偏る」 「もう。ひろってばお母さんみたいなこと言うんだから」 レナさんはそう口を尖らせたけど、少ししてハッとしたように背筋を伸ばした。 「ごめん。何でもない」 「いや、別に」 突然のぎこちない雰囲気。 あまり触れるべきでない話題に触れたのかな、ということが何となく伝わってきた。 二人は姉弟だけど苗字が違う。そういえばレナさんも以前「色々あって」と言っていた。 だからたぶん、家族についての話はしないというのが暗黙の了解になっているのではないだろうか。 私はご飯を食べるのに夢中で、二人の間に流れる微妙な空気感に気が付かないふりをして言った。 「由梨が一生懸命作ってたので、良かったらこのカップケーキ、お腹いっぱいになる前に一つ食べてあげてください」 レナさんがほっとしたように表情を和らげたのがわかる。 「うん。じゃあ少しだけ味見させてもらおー」 レナさんは一口かじって「わあ、美味しい!」と微笑む。 遠坂くんも夕食を一通り完食した後一つ手に取った。 「小野山さんはクッキー作ったりしないの?」 「へ?クッキー?」
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