そのお菓子は甘い恋心を彷彿させる

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遠坂くんに突然言われて驚く。 どうしてクッキー? 一年生の時にクラスの子たちに配ったこともあるし、確かにお菓子の中では得意な方だけど……。 「えっと、遠坂くんはクッキーが好きなの?」 「そういうわけじゃないけど、去年小野山さん……」 遠坂くんはそこまで言いかけて、何かを思い出したように口をつぐんだ。 「……いや、何でもない。何となく、小野山さんクッキーとか作るの得意そうだなって思っただけ」 「そ、そう?じゃあ今度作ろうかな。……由梨と一緒に!お菓子作るの得意みたいだし」 一応由梨の名前を出しておく。由梨のことを応援してあげるって約束したもんね。 すると遠坂くんは、少し複雑そうな表情を浮かべた。 「いや、俺は小野山さんが作った……」 「え?」 「……そういえば、このカップケーキ持ってきてくれた人の名前、もう一回教えてもらえない?」 「由梨のこと?藤田(ふじた)由梨(ゆり)だよ。あれ、私と同じクラスなんだけど知らなかった?」 由梨は美人だから、遠坂くんほどでないにしても、うちの高校では有名なはずなんだけどな。 私が首をかしげると、遠坂くんは苦笑いした。 「さすがに隣のクラスの人まで把握してるわけじゃないから。昨日会った小野山さんの友達ってことで、一応顔は覚えてたけど」 「……あ、そっか。そりゃそうだよね」 いくら有名でも、あまり周りと交流を持たない遠坂くんが由梨のことを知らなくても別に不思議じゃないか。
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