人見知りにもちゃんと友達はいる

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人見知りにもちゃんと友達はいる

○●○ 数学の授業は苦手だ。 難しくてわからないからというのもあるし、この先生の教え方があまり合っていない気がする。 授業中、一生懸命聞いているつもりでも、いつの間にか全然違うことを考えてしまっていたりする。 今日もそうだった。 先生が問題を解説している途中、どうもついていけなくなって、気が付けば「今日の夕ご飯は何にしようかな……」なんて考えていた。 いつも和食が多い気がするし、今日は洋食にしよう。 カレーだと一気にたくさん作りやすいかな。あ、でも今日はレナさんが担当さんと食事に行くって言ってたから、遠坂くんと二人分で良いんだ。 だったらロールキャベツなんてどうだろう。あれだとキャベツが美味しく食べられるんだよね。 あとは付け合わせのサラダなんかも作って…… 「……で、ここに入る数字を……小野山、答えてくれ」 先生に名前を呼ばれて、私はパッと前を向く。 やばい。全然聞いてなかった。いや、たぶん聞いててもわかってないけど。 「えっと……」 たらりと冷や汗が流れる。 しんと静まり返った中、正直に「わかりません」と言おうと腹をくくったとき、隣の席からノートの切れ端を渡された。 そこには書きなぐったような字で“5”と書いてあった。 「えっと、“5”、です」 「正解。ここに5が入るから、今度はこの式のXを全部5に置き換えて……」 ほっ、良かった……。
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