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その後は特に当てられることもなく、無事に数学の授業が終了した。
先生が教室から出て行ったのと同時に、私は隣の席の救世主に深々と頭を下げた。
「杉野くん……!さっきは本当にありがとう!」
昨日の席替えで隣の席になった、杉野廉くん。
サッカー部のエースで、学業成績も優秀。
由梨はよく冗談めかして「サッカー小僧」なんて言ってるけど、爽やかなルックスと誰に対しても人懐っこい態度で、男女問わず人気がある。
「いえいえ。小野山さん、心ここにあらずな感じだったから、たぶん先生に目を付けられるなって思って準備してた」
「う、嘘……お恥ずかしい……」
「はは、でもあの先生ちょっと説明わかりにくいよな。さっきの問題、ちゃんとわかった?」
「実は途中からさっぱりで」
「どのへん?」
杉野くんは爽やかな笑みを浮かべながら私のノートをのぞきこむ。
そして、私がつまずいた箇所を一つ一つ丁寧に解説してくれた。
「あ、そっか。それでさっきの答えが出たんだね。ありがとう!授業より何倍もわかりやすい!」
「はは、それは良かった」
「杉野くん、これから次の席替えまでどうかよろしくお願いします」
「こちらこそ」
ああ、良い人だな杉野くん。
というか貴重な昼休みの15分を私のために使ってもらっちゃって申し訳ない。
そう思いながら数学の教科書類を片付けていると、コンビニの袋を持った由梨が私の席までやってきた。
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