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これまでの大変さが一気に蘇ってきて、自然とため息がこぼれる。
杉野くんはそんな私を見てくすりと笑い、自分もしみじみとした様子で言った。
「うん。だけどオレ、実行委員、在花ちゃんと一緒で良かったよ」
「え?」
「在花ちゃん、真面目で仕事速いしさ。委員会でも意見ちゃんと出すし、すげぇ助かった」
ありがとう、といつもの爽やかな笑みを浮かべた杉野くんに驚く。
そんな風に思ってもらえてたんだ……!すごく嬉しい。
だけどそんなのはこっちのセリフだ。
「わ、私こそ、選手決めのときとか杉野くんが仕切ってくれて本当に助かったよ?それに委員会のときだって、私がたまに的外れなこと言っちゃったとき、杉野くん上手にフォローしてくれたじゃん!本当に本当にありがとう!」
「じゃあそう考えると……オレたち、結構いいコンビだったのかもな」
「うん……ていうか、こういうのってちゃんと終わった後に言うやつだよね」
「はは、確かに本番は今からなのにな」
私たちはお互いに顔を見合わせて笑い合うのだった。
○●○
『プログラムナンバー1番、学年別100メートル走です。参加する生徒は……』
晴天の中、放送部の滑らかな声が響き渡る。
とうとう始まった体育祭。
最初は100メートル走からだ。
全員参加競技を除き、同じ人は二度まで出場できる決まりになっている。
だから100メートル走と花形の選抜リレーのアンカーは、大抵どこもクラスで一番足の速い人が選ばれている。
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