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私はものごころがついた時から弟が笑った顔を見た事がありません。
しかし弟が小学校に入ってからの事です。
母が保護者面談のため学校に行った時に担任の先生から聞いた信じられない言葉です。
「隆志君はとても明るく、元気で、笑顔のたえないクラスのムードメーカーですよ。」
この言葉を聞いた時、母は驚きもしたが「少し安心した。」と言っていました。
「家では笑わなくても学校にはちゃんと友達がいる。」のだと。
でもそれは間違いでした。
弟はいつも学校から帰ると自分の部屋にこもってしまい、食事とお風呂に入る時くらいしか姿を見せません。
部屋にいる時もゲームなのか音楽なのか、隣の私の部屋まで聞こえるほどの音楽をならしていました。
私は勉強に集中できないので弟を叱ろうと思い隆志の部屋のドアを開けようと思ったその時です。
「しくっ…」
部屋の中から弟が泣く声が微かに聞こえました。
私はドアをそっと開けて中を覗いてみました。
するとそこにはベットにうずくまって泣いている弟がいました。
私は全てを悟りました。
弟はその日たまたまイジメられたんじゃない。
毎日こうして父親のいない淋しさを1人泣く事によって我慢してきたのだと。
「父親」がいない…
子供達はその事を無邪気に、そして残酷に言葉に表し弟をイジメてきたのだろう…
でも隆志はまるで何ともないように振る舞い、無理に笑顔を作ってきたのだろう…と。
私はどう言葉をかければいいのかわからず逃げるように自分の部屋に戻りました。
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